すぐに水野文香の誕生日がやってきた。
夏目星澄は仕事を終え、家に帰って着替えてからホテルでのお祝いに向かおうとしていた。
受付から彼女宛の荷物が届いていると告げられた。
夏目星澄はネットで何か買った覚えがなかった。
しかし荷物を受け取って確認すると、差出人は霧島冬真だった。
なぜ突然彼が彼女に何かを送ってきたのだろう?
夏目星澄は興味深く荷物を開けてみると、中には深いVネックで大小の真珠が散りばめられた真っ赤なイブニングドレスが入っていた。
ブランドタグを見ると、高級ブランドのものだった。
しかし、全く彼女の好みのスタイルではなかった。
なぜ霧島冬真はこんな服を彼女に送ってきたのだろう?
夏目星澄には全く理解できなかった。
ちょうどそのとき、霧島冬真から電話がかかってきた。「どこにいる?迎えに行くよ」
夏目星澄は箱の中のドレスを見下ろし、冷ややかな声で言った。「この服、あなたが送ったの?」
「ああ、母さんが誕生日だから、君もきれいに着飾ってほしいって言うから、店で新しいドレスを買って送ったんだ。気に入った?」
夏目星澄は眉をひそめた。このデザインとこの色では、着ていけば明らかに恥をかくことになる。
なぜこんなドレスを送ってきたのだろう。
彼女が疑問を口にする前に、甘ったるい声が電話から聞こえてきた。「冬真さん、私のために買ってくれたこのドレス、とても素敵ですわ。気に入りました!」
夏目星澄は白く長い指で携帯電話を握りしめた。「梁川千瑠にも服を買ったの?」
霧島冬真は少し困ったように言った。「買ってないよ。服屋で偶然会っただけで、彼女のカードに問題があって、立て替えてほしいと言われただけだ。明日返してくれるって」
夏目星澄は冷たく笑った。どう違うというのか、いくらであれ、霧島冬真は最後にはきっと返してもらわないだろう。
もう何も言いたくなかった。「迎えに来なくていい。自分で行くから」
電話は突然切れた。
霧島冬真の表情も暗くなった。
また何かあったのだろうか?
梁川千瑠はすでに着飾り終え、甘い笑顔で霧島冬真の側に寄って来た。「冬真さん、このドレス似合ってますか?」
霧島冬真は携帯をしまい、淡々とした表情で言った。「君が気に入ったならいいよ。行こうか」