夏目星澄が反応する間もなく、霧島冬真に外へ引っ張り出された。
彼が彼女を車に押し込もうとした時、やっと手を振り払って、「何をするの?」と抵抗した。
突然現れて、突然彼女を連れ出すなんて。
霧島冬真は少し沈んだ声で言った。「何をするかって、母さんから離れさせるに決まってるだろう。」
夏目星澄は一瞬固まった。「どうして私がお母さんから離れなきゃいけないの?」
霧島冬真は説明した。「当時の結婚を母は反対していた。今回突然帰ってきたのは、きっとお前を困らせるためだ。だから俺は...」
夏目星澄は冷静な声で遮った。「知ってるわ。」
「何を?」
「お母さんが最初、私との結婚に反対していたことは知ってる。でも、あなたが思ってるのとは違うの。」
夏目星澄が当時彼と結婚したのは、まったくの偶然だった。
霧島冬真は責任を取るために彼女と結婚したが、彼女は愛のために彼と結婚した。
おばあさまの取り持ちで、二人はすぐに婚姻届を出した。
水野文香はそれを知ると、夏目星澄と二人きりで話をした。
霧島冬真との結婚が自分の意思なのかと尋ねた。
もし自分の意思でないなら、離婚の手続きを取り、この婚姻を無効にすることもできる。そうすれば戸籍上は未婚のままで、再婚の妨げにもならないと。
夏目星澄は水野文香がなぜそんなことを聞くのか分からなかったが、恥ずかしそうに自分の意思だと答えた。
水野文香は夏目星澄が強制されていないことを確認すると、それ以上何も言わなかった。
その後、水野文香は霧島冬真にも、夏目星澄との結婚が本心からなのか尋ねた。
彼女は自分の息子が生まれつき冷淡で無関心な性格で、本当の愛情が分からないと感じていた。
夏目星澄を傷つけてほしくなかった。
しかし霧島冬真は、もう婚姻届も出したのだから、望むか望まないかはもう重要ではないと言った。
それに夏目星澄は既に自分の女になったのだから、結婚しないとなれば霧島グループの評判に関わると。
しかし水野文香はそうは考えなかった。自分を愛していない男と結婚して一生を過ごすことがどういうものか、彼女は痛いほど分かっていた。夏目星澄に同じ轍を踏ませたくなかった。
そこで、夏目星澄が好きではない、結婚に賛成できないと言い、早く離婚するように促した。