第54章 こんなにも私を見たくないの？

夏目星澄は離婚のことで頭を悩ませており、お見合いなどする気分ではなかった。

たとえ本当に離婚したとしても、新しい恋愛を始めるのは難しいだろう。

「瑶子、私のことを心配してくれるのは分かるけど、今は少し疲れているの。寝たいわ」

林田瑶子は彼女の疲れ切った様子を見て、これ以上何も言えなくなった。「うん、休んで。邪魔はしないわ」

夏目星澄の寝室を出ると、すぐに携帯を取り出し、知り合いの優良な男性を探し始めた。

霧島冬真ほどの金持ちではないかもしれないが、きっと一途で、彼女の星澄の心を傷つけることはないはずだ。

突然、携帯に霧島冬真の電話番号が表示され、彼女は驚いた。

まさか、この最低な男が彼女の携帯に監視アプリを仕掛けて、妻に男を探そうとしていることを知って、彼女に文句を言いに来たのだろうか？

霧島冬真が怒ると、実際かなり怖い。

林田瑶子はよく考えてみると、自分のやっていることは間違っていない。霧島家が先に人を傷つけたのだから！

最後に彼女は不機嫌そうに電話に出た。「何のご用でしょうか、霧島社長！」

「星澄が家に帰ってこないんだが、そっちにいるのか？」霧島冬真は夏目星澄が家にいないことに気付き、電話をかけても出ず、実家にも戻っていないことが分かった。

彼には林田瑶子に聞くしかなかった。

「私の星澄はもう二度と戻りませんよ。探さないでください」

「電話を代わってくれ」

「霧島冬真、あなたは人をなめすぎよ。星澄はあなたに傷つけられて、すっかり元気をなくしているのに、まだ何をしようというの！」

霧島冬真は急に眉をひそめた。「彼女がどうしたんだ？」

林田瑶子は感情的に叫んだ。「今さら彼女のことなんて気にしているふりをしないでよ！ここまできて、まだ演技するの？星澄のことを大切に思っているから離婚したくないのかと思ったのに、全然違った。気にもかけていないどころか、もっとひどく傷つけるなんて。死んじゃえ、最低な男！」

電話はバンと切れた。

霧島冬真の瞳は一瞬にして冷たく鋭いものになった。

林田瑶子のこの言葉は一体どういう意味なのか。

一日星澄に会っていないだけで、どうやって彼女を傷つけたというのか？

しかし考え直してみると、彼女は常に星澄のことを気にかけているから、理由もなくこんな態度を取るはずがない。