第63章 決して金のためではなかった

霧島冬真と夏目星澄の離婚のニュースは、すぐに上流社会の間で広まった。

彼らはこの件について話し合うためだけのグループを作ったほどだ。

「まさか、信じられないわ。夏目星澄って女、よくもまあ大胆にも霧島家のあの方と離婚しようだなんて!」

「この目で見てなかったら信じられなかったわ。霧島家の若奥様として公表されてからそう経ってないのに、もう離婚騒ぎよ。私たちの界隈でもかなりの衝撃だわ」

「ああもう、みんな知ってるのに私だけ何も知らないの。誰か天使のお姉様、これがどうしてなのか教えてくれない?」

「林田真澄の妹の林田瑶子が、お酒を飲み過ぎて暴れ出して、梁川千瑠に赤ワインをぶっかけたの。そこへ霧島様の奥様が来たってわけ」

「霧島様が梁川千瑠に謝罪するよう求めたけど、彼女が拒否して喧嘩になって、最後には離婚の話になったの。霧島様がどんな人か知ってるでしょう?彼女を甘やかすはずないわ。すぐに同意したのよ」