第62章 霧島家はあなたに借りがある

夏目星澄はついに我慢できず、目に涙を浮かべながら「お婆ちゃん、そんなに取り乱さないで。体が大事だから、興奮しないで」と言った。

事ここに至っては、もう仕方がない。

無理に結ばれた縁は実らないというけれど。

霧島冬真との縁はここまでだったのかもしれない……

霧島お爺様も妻を抱きしめながら、優しく慰めた後、夏目星澄に向かって諦めたように溜息をつき「星澄、気にすることはない。冬真と別れても、お前は私たちの大切な孫娘だ。これからも家に帰ってきておくれ。いつでも歓迎するよ」

夏目星澄は目が熱くなり、涙が溢れそうになった。「ありがとうございます、お爺様。時間があれば、必ずお爺様とお婆ちゃんに会いに来ます」

霧島お爺様は頷きながら、心の中で同じように別れを惜しんでいた。

夏目星澄は時間が来たと感じ、これ以上長居するのも適切ではないと思い、思わず言った。「そうそう、これは前に作った香り袋です。安眠効果があるので、お婆ちゃんが頭痛で眠れない時は、枕元に置いてください」

「それに、もうすぐ暑くなりますから。お婆ちゃんはエアコンが好きですけど、つけすぎると風邪を引きやすいので、体調に気を付けてください。冷たいものも胃腸によくないので、控えめにしてくださいね」

夏目星澄はまだたくさん言いたいことがあったが、話せば話すほどお婆ちゃんが悲しむと思い、言葉を飲み込んだ。

声は何度も詰まりそうになった。

登坂萌乃はついに耐えきれず、手を伸ばして夏目星澄を強く抱きしめた。「私の可愛い子、こんな時でも私の体を気遣ってくれて、本当に感動したわ」

「これからは自分のことを大切にするのよ。何か困ったことがあったら、お婆ちゃんに言いなさい。必ず助けてあげるから!」

夏目星澄の心は針で刺されたように痛んだ。彼女は老人の背中を優しく撫でながら、「ありがとうございます、お婆ちゃん。わかりました。この三年間の面倒を見てくださって、本当にありがとうございました」

登坂萌乃は心配そうに夏目星澄の頬を撫でながら、「馬鹿な子、感謝するのは私の方よ。冬真が事故に遭ってから今まで、あなたがいなければ、彼は今のように健康になれなかったわ。結局、私たち霧島家があなたに申し訳ないことをしたのよ」