夏目星澄は霧島冬真が梁川千瑠に対してこんなにも冷たい態度を取るとは思わなかった。
以前はいつも心配で眠れないほどだったのに、どうして急に性格が変わったのだろう?
でも、もう自分には関係のないことだ。
「じゃあ、用事もないので、私は先に失礼します」
「誰が用事がないって言った。ちょっと待て」
夏目星澄は不思議そうに彼を見つめた。二人の間にまだ何か用事があるというのだろうか。
霧島冬真は長い脚で歩き、近くのカウンターに行き、冷たいコーラを一缶買って、夏目星澄に手渡した。
生理中で冷たいものが飲めない夏目星澄は、「ありがとう。でも、飲めません」と言った。
霧島冬真は直接コーラを彼女の顔に当て、淡々と言った。「飲むためじゃない。顔を冷やすためだ。腫れているから」
夏目星澄は息を呑んだ。コーラは冷たかったが、確かに顔の腫れを和らげてくれた。
男性の突然の気遣いに戸惑いを感じ、「あの...ありがとう。コーラの代金、振り込ませてください」と言った。
どちらにしても二人は離婚することになっているのだから、彼に少しでも恩を受けたくなかった。
霧島冬真の目が暗くなった。「数百円のものまで計算しようとするのか。夏目星澄、お前はよくやってくれる!」
夏目星澄は彼がこれほど怒るとは思わず、慌てて説明した。「違います...今の私たちの関係を考えると...はっきりさせておいた方がいいと思って」
霧島冬真は深いため息をついた。「計算も何もない。行くぞ」
二人の間のことなど、どうやって計算できるというのか。
夏目星澄の小さな頭の中で何を考えているのか、さっぱり分からない。
夏目星澄は一瞬固まった。「どこへ?」
霧島冬真は冷静な表情で言った。「林田瑶子が来る途中で事故に遭った」
彼がここにいたのは、林田真澄と打ち合わせをしている時に、突然林田瑶子の事故の電話を受けたからだった。
林田瑶子は夏目星澄と連絡が取れないことを心配し、何か起きているのではないかと思い、林田真澄に映画館を確認するよう頼んだのだ。
林田真澄は林田瑶子のことが心配で、霧島冬真に先に夏目星澄を探しに行かせた。
まさか来てみれば、先ほどのような場面に出くわすとは思わなかった。
夏目星澄は急に不安になった。「なぜ早く言ってくれなかったの?彼女の状態は?怪我は重いの?どこの病院?」