初恋という名前は、ロマンチックでありながら繊細な響きを持っていた。
緒方諒真は、もし霧島冬真と夏目星澄がお互いの初恋同士なら、それを買って帰るのも無理はないと思った。
しかし、夏目星澄は霧島冬真の初恋ではなかった。
まさか梁川千瑠に贈るために買うつもりなのだろうか?
前回二人がゲームをした時、夏目星澄はひどく怒り、結婚指輪まで投げ捨てて離婚騒ぎを起こしたのだ。
今日もしこの「初恋」ジュエリーセットを買って帰ったら、離婚騒ぎどころか本当の離婚になりかねない!
霧島冬真は平然とした様子で言った。「ただのジュエリーを買うだけだ。誤解されることなどない」
緒方諒真は鼻を撫でながら、この嘘は自分でさえ信じられないのに、まして夏目星澄なら尚更だと思った。
飛行機を降りてすぐに発表会に来るほど気軽なら、なぜ戦車や大砲でも買って帰らないのか?
緒方諒真は、夏目星澄が霧島家でも楽ではないだろうと思い、もう少し忠告しようとした。
しかし、その時見覚えのある姿を見つけた。「あれ、冬真さん、あそこにいるの、早川晴乃じゃないですか」
霧島冬真は見向きもせずに「知らない」と答えた。
しかし緒方諒真はかなり興味を持った。なぜなら、いつも甘やかされて育った早川晴乃が、今は良い子のように男性の傍から離れず、しかも機嫌を取るような表情を浮かべているのを見つけたからだ。
しばらくすると、早川晴乃も彼らに気付き、隣にいる男性の腕を引っ張って挨拶に来た。「いとこ、諒真さん、どうしてここにいらっしゃるんですか?」
彼女はジュエリーの発表会には女性だけが参加すると思っていた。
霧島冬真は何も言わなかった。
緒方諒真は笑顔で挨拶を返した。「晴乃、久しぶりだね」
早川晴乃も気にしなかった。どうせ霧島冬真の態度は彼女に対していつも冷たかったのだから。
「そうですね、諒真さん、本当に久しぶりです」彼女は隣の男性の腕に手を回しながら紹介した。「ご紹介します。こちらは私が留学中に知り合った先輩の花井風真さんです」
花井風真は早川晴乃の手から腕を抜き、緒方諒真に手を差し出した。「はじめまして、花井風真です」