第76章 もし夏目星澄が離婚を後悔したら

初恋という名前は、ロマンチックでありながら繊細な響きを持っていた。

緒方諒真は、もし霧島冬真と夏目星澄がお互いの初恋同士なら、それを買って帰るのも無理はないと思った。

しかし、夏目星澄は霧島冬真の初恋ではなかった。

まさか梁川千瑠に贈るために買うつもりなのだろうか?

前回二人がゲームをした時、夏目星澄はひどく怒り、結婚指輪まで投げ捨てて離婚騒ぎを起こしたのだ。

今日もしこの「初恋」ジュエリーセットを買って帰ったら、離婚騒ぎどころか本当の離婚になりかねない!

霧島冬真は平然とした様子で言った。「ただのジュエリーを買うだけだ。誤解されることなどない」

緒方諒真は鼻を撫でながら、この嘘は自分でさえ信じられないのに、まして夏目星澄なら尚更だと思った。

飛行機を降りてすぐに発表会に来るほど気軽なら、なぜ戦車や大砲でも買って帰らないのか?