第77章 彼女の歌は私のために書いた

一連の作品が展示された後。

司会者は岡田啓仁が彼の最後を飾るジュエリー作品と共に登場すると発表した。

彼と一緒に現れたのは夏目星澄だった。

発表会が始まる直前に知らされたのだが、元々最後を飾るはずだった女性モデルが足首を捻挫してしまい、歩けなくなったのだ。

岡田啓仁は彼女に、最後の「ときめき」のメインピースを着けて一緒に登場することを依頼した。

これから彼女が歌う曲とちょうど呼応するものだった。

夏目星澄は熱心な依頼を断れず、岡田啓仁と共にステージに上がった。

拍手が収まった後、岡田啓仁は自身の作品を紹介すると同時に、夏目星澄も紹介した。

下で座っていた緒方諒真は驚いた表情で、「冬真さん、見てください、あれは奥様じゃないですか。まさか彼女が岡田啓仁のミューズになるなんて、この組み合わせは全く想像もしていませんでした!」

霧島冬真はステージを見つめ、眉をひそめたまま何も言わなかった。

司会者は岡田啓仁の説明が終わると、突然興味深そうに尋ねた:「なるほど、岡田デザイナーとスターさんにはそのような縁があったのですね。それでは、スターさんにお聞きしたいのですが、この曲のインスピレーションは何だったのでしょうか?」

夏目星澄は少し緊張して視線をどこに向けていいか分からなかったが、司会者の質問を聞いてようやく我に返った。「私のインスピレーションは、ある思い出です。」

「その思い出は、きっとあなたの初恋に関係があるのでしょうね。初恋の時はどんな感じでしたか?」

「私にとって初恋は、純粋で、無邪気で、そしてロマンチックな感覚です。まるで一つの酒を醸造するように、発酵から熟成まで、その味わいは自分だけが知っています。それは美しい思い出の一つなので、『ときめき』という曲を作りました。」

霧島冬真は夏目星澄の答えに満足げで、口角を上げながら言った。「彼女の曲は私のために書いたものだ。」

緒方諒真は驚いて、「え?」

緒方諒真は夏目星澄が大学で音楽を専攻していたことは知っていたが、彼女がこれほどの才能を持っているとは思っていなかった。歌を出しただけでなく、岡田啓仁の創作のインスピレーションにもなっていたなんて。

霧島冬真は彼が呆然としている様子を見て、急に興味を持って説明した。「つまり、私が彼女の初恋だということだ。」