夏目星澄は今夜、霧島冬真が来るとは知らなかった。
荷物を片付けているとき、結婚式の時に残した赤ワインを見つけた。
林田瑶子からの結婚祝いのプレゼントだった。
フランスから特別に注文したもので、選んだ時期も彼らの結婚式当日の日付だったという。
二人の結婚生活が永遠に続くことを願って。
しかし、わずか3年で、この結婚生活は終わりを迎えた。
夏目星澄は本来、夜に部屋で霧島冬真と少し飲むつもりだった。
しかし霧島冬真は彼女の顔を立てることなく、隣の客室に追いやってしまった。
そのワインも結局飲まれることなく、今日まで残っていた。
当然、新婚初夜もなかった。
夏目星澄は、もうここには戻ってこないだろうと思い、過去に区切りをつけるつもりで赤ワインを開けて一人で飲んだ。
半分ほど飲んだところで、ドアベルが鳴った。
彼女は霧島冬真をソファーに寝かせると、もう構わないことにした。
以前は世話を焼きすぎて、自分が世話係のようだった。
まだ30歳にもならない、青春真っ盛りなのに、なぜ一人の男にばかり時間を費やさなければならないのか。
そして部屋に戻り、残りのワインを全部飲み干して、そのまま眠りについた。
しかし夜中になって、なぜか隣に暖炉があるかのように熱くて耐えられなかった。
着すぎているのだろうか?
夏目星澄はぼんやりとしながら、パジャマを脱いだ。
それでもよく眠れず、ベッドにある180センチの大きなクマのぬいぐるみを抱きしめたくなった。
この時、彼女はまだ自分がアパートにいると思っていた。
タコのように大きなクマに絡みついた。
しかし、なぜか元々柔らかかったクマのぬいぐるみが急に硬くなり、痩せたようにも感じた。
中の綿が出てきたのだろうか?
もういい、明日起きてから考えよう。
夏目星澄は目を細めて、大きなクマにキスをして、「おやすみ」と言った。
霧島冬真は気持ちよく眠っていた。
突然、何かが自分に絡みついてきた感覚がした。
彼は瞬時に目を開け、鋭い眼差しで見た。
夏目星澄が艶やかな唇を突き出してキスをしてきて、おやすみと言った。
無関心を装っていたはずなのに、なぜ今になって抱きついてきてキスをするのか?
女性はみんなこんなに口が裏腹なのか?