夏目星澄は今夜、霧島冬真が来るとは知らなかった。
荷物を片付けているとき、結婚式の時に残した赤ワインを見つけた。
林田瑶子からの結婚祝いのプレゼントだった。
フランスから特別に注文したもので、選んだ時期も彼らの結婚式当日の日付だったという。
二人の結婚生活が永遠に続くことを願って。
しかし、わずか3年で、この結婚生活は終わりを迎えた。
夏目星澄は本来、夜に部屋で霧島冬真と少し飲むつもりだった。
しかし霧島冬真は彼女の顔を立てることなく、隣の客室に追いやってしまった。
そのワインも結局飲まれることなく、今日まで残っていた。
当然、新婚初夜もなかった。
夏目星澄は、もうここには戻ってこないだろうと思い、過去に区切りをつけるつもりで赤ワインを開けて一人で飲んだ。
半分ほど飲んだところで、ドアベルが鳴った。