夏目星澄は家で二日間休んだ後、再び仕事に戻ると、芦原雅子は彼女をバラエティ番組の収録現場に直接連れて行った。
今の芸能界で知名度を上げるには、バラエティ番組に出演するか、演技をするかの二つの方法がある。
夏目星澄が今回参加する番組は『素晴らしい声』という、歌唱競技系の番組だった。
番組制作側も夏目星澄の歌を聴いて、歌声が良く、潜在能力があると感じ、彼女を招待した。
幸いにも夏目星澄はネット上の誤った噂を払拭することができた。
多くのネットユーザーから好感を得ることができた。
番組制作側もこの話題性を利用して、宣伝しようと考えていた。
まさにウィンウィンの関係だった。
夏目星澄は初めてのテレビ局のバラエティ番組収録で緊張していた。
幸い芦原雅子が常に付き添い、収録時の注意点などを説明してくれた。
彼女は徐々にリラックスし、状況に慣れていった。
林田瑶子は、夏目星澄が3年前にやむを得ず歌手の夢を諦めたことを知っていたので、今は特に一生懸命だった。
しかし、毎日こんなに早朝から深夜まで働いて、体が持たないのではないかと心配して、「星澄、今回の番組収録を大切に思っているのは分かるけど、頑張りすぎちゃダメよ。休息を取らないと。見て、痩せちゃったじゃない」
夏目星澄は無意識に自分の頬に触れながら、冗談めかして言った。「そう?じゃあダイエットしなくていいってことね」
「そういう問題じゃないでしょ。痩せすぎると体を壊しちゃうわよ。番組収録どころか何もできなくなっちゃうわ」
「はいはい、気をつけます」
「そうそう、もう一つ言い忘れてたことがあるの。花井風真っていう男の人が、私たちのマンションに何度も来てるのよ。あなたは早朝から深夜まで働いてるから知らないでしょうけど、私は何度も会ってるわ。彼が私に話しかけてきて、あなたに一度会いたいって伝言を頼まれたの」
花井風真?
夏目星澄は彼がここまで来るとは思っていなかった。
彼が何のために自分を探しているのか分からなかった。
夏目星澄は首を振って、「会いたくないわ。もし次に会ったら、もう来ないでって伝えて」
林田瑶子は考え深げに言った。「でも、私が知る限り、花井風真の身分も普通じゃないわ。花井市長の次男で、霧島冬真のいとこの早川晴乃が彼を追いかけているらしいわ」