夏目星澄は天地が真っ暗になるほど吐き続け、霧島冬真が来ていることにも全く気付いていなかった。
今は死にたいほど吐き気が酷く、本当に苦しかった。
顔には汗なのか涙なのか分からない液体が流れ、拭う間もなく気を失ってしまった。
看護師は夏目星澄の嘔吐がおさまってきたのを見て、そのまま病室へ移動させた。
しかし一般病室は環境が複雑で騒がしく、花井風真は夏目星澄の休息の妨げになることを心配した。
だが看護師に病室の変更を申し出る前に、看護師が戻ってきて「夏目さんには特別室が用意されています。こちらへどうぞ」と言った。
花井風真は入口に立っている男性を見て、彼が手配したことを理解し、拒否はしなかった。
夏目星澄がゆっくり休めるなら、それでよかった。
しかし夏目星澄が特別室に入るや否や、花井風真は霧島冬真を入口で止めた。「岡田社長、星澄は休息が必要です。入らないでください」