霧島峰志は、母親が梁川千瑠をここまで嫌っているとは思わなかった。エビ一匹すら食べさせたくないほどだった。
梁川千瑠は心の中で悔しくてたまらなかった。霧島冬真に会えないから仕方なく、
霧島峰志に助けを求めるしかなかったのだ。
そうでなければ、こんな屈辱は受けなかったはずだ。
なんだってエビなんか、食べたくもないのに!
霧島峰志は梁川千瑠が今にも泣き出しそうな様子を見て、急いで慰めた。「千瑠、このツバメの巣のお粥も美味しいよ。たくさん食べなさい。女の子の体にいいし、美容にもいいんだ。」
梁川千瑠は霧島峰志がこれほど自分のことを気遣ってくれることに、少し嬉しくなった。
どうせ登坂萌乃はもうそんな年だし、長くは生きられないだろう。
彼女の機嫌を取るのに時間を無駄にする必要もない。
霧島峰志が自分の味方でいてくれさえすればいい。
梁川千瑠は笑顔を浮かべ、礼儀正しく言った。「ありがとうございます、霧島おじさん。」
しかし彼女が茶碗を差し出した途端、登坂萌乃がまた使用人に指示を出した。「そのツバメの巣のお粥も持ってきなさい。私が入れたのは血燕で、特別に星澄の体のために煮込んだものよ。他人に無駄遣いするわけにはいかないわ。」
登坂萌乃は「部外者」だの「他人」だのと言い続け、
梁川千瑠との関係を完全に切り離し、一切の余地を与えないようにしていた。
この時、梁川千瑠は茶碗を持った手が宙に固まり、とても気まずい表情を浮かべていた。
明らかに、霧島お婆様は彼女にまともに食事をさせたくないのだった。
霧島峰志はもう見ていられなくなった。「お母さん、もうそんな年なのに、そんな子供じみたことをするのはやめてください。どう考えても、うちと梁川家は50年近い付き合いがあるんです。これが外に漏れたら、霧島家は一食の食事すら惜しむような家だと思われてしまいます。恥ずかしいじゃないですか!」
登坂萌乃は霧島峰志を鋭く睨みつけた。「恥ずかしくもなんともないわ。ここは私の家よ。誰に食事を出すかは私が決めることでしょう。気に入らないなら、あなたも食べなくていいわ。彼女を外のレストランに連れて行って、好きなように食べさせなさい。私は関係ないわ!」
食事すら平穏にできない、本当に面倒くさい。