霧島冬真は本来なら実家に帰りたくなかった。
帰れば、お婆様が夏目星澄のことについてうるさく言うのが分かっていたからだ。
しかし、夜になって、彼の携帯に突然メッセージが表示された。
「今日はお婆様の旧暦の誕生日よ、忘れないでね!」
霧島冬真の目が沈んだ。
去年の今日、夏目星澄が彼の携帯で設定したことを思い出した。
以前は家族みんなで祖父母の誕生日を新暦で祝っていた。
夏目星澄だけが覚えていた。
彼女は年配の方は旧暦の誕生日の方が好きだと言っていた。
そして、彼らが一番望んでいるのは家族が集まって、簡単な食事をすることだと。
だから年に二回誕生日を祝うのもいいじゃないかと。一回は家族だけで、もう一回は対外的な誕生日パーティーとして。
そこで霧島冬真は手元の仕事を置いて、実家に急いで戻った。
ただ、彼は夏目星澄も梁川千瑠もいるとは思わなかった。
しかも様子を見ると、彼が戻る前にいろいろあったようだ。
「申し訳ありません、お婆様。渋滞で遅くなってしまいました。でも誕生日は忘れていませんでした。このプレゼントを気に入っていただければと思います。」
霧島冬真は謝罪の後、選んできた真珠のアクセサリーセットを差し出した。
これも去年、夏目星澄が彼に話していたことだった。お婆様が最近テレビを見て真珠に興味を持ち始めたから、次のプレゼントは真珠のアクセサリーセットがいいと。
急遽購入したものだが、品質は最高級のものだった。
霧島冬真にとって、お金は全く問題ではなかった。
登坂萌乃はその真珠のアクセサリーセットを見て、目を輝かせた。「まあ、素敵!冬真、お婆様の誕生日を覚えていてくれたのね。あなたのお父さんよりずっと心がある。」
霧島冬真は彼女の後ろにいる夏目星澄に視線を向けた。「お気に召していただけて良かったです。」
夏目星澄はお婆様がプレゼントを喜ぶ様子を見て、自分も嬉しくなった。
突然、熱い視線を感じた。
思わず見返すと、霧島冬真の深く暗い瞳と目が合ってしまった。
しかしそれはほんの一瞬で、彼女はすぐに目をそらした。
彼女はお婆様の誕生日を祝いに来ただけで、霧島冬真とあまり関わりたくなかった。
また彼に何か企んでいると誤解されたくなかったから。
いつも誤解される感じは本当に良くない。