第148章 もう君の思い通りにはさせない

夏目星澄は検査を終えて病室に戻ると、霧島冬真がまだそこにいるのを見て、なぜか心が落ち着かなかった。

彼の顔色は、自分よりも悪いように見えるのはなぜだろう?

登坂萌乃は星澄と一緒に戻ってきて、霧島冬真がまだ帰っていないのを見て、内心嬉しく思った。

少なくとも、彼の心の中に夏目星澄がいることの証だった。

「冬真、ここで星澄の付き添いをしていてちょうだい。私は生活用品を取りに帰ってくるわ。医者は少なくとも一週間の入院観察が必要だと言っているの。」

霧島冬真は軽く口角を上げて、「はい、ここにいます。どこにも行きませんから。」

夏目星澄は実は必要ないと言いたかった。怪我はそれほど深刻ではなく、自分で十分に対処できると。

霧島冬真に世話をされるのは、かえってプレッシャーになりそうだった。

しかし、言葉を発する前に、霧島お婆様はすでに出て行ってしまった。

夏目星澄はベッドの向かいに座っている霧島冬真を一瞥して、「あの...お婆様の言葉は気にしないで。私一人でも大丈夫だから、明日も仕事があるでしょう?早く帰って休んでください。」

霧島冬真は瞳を暗くし、しばらく黙って彼女を見つめた後、陰のある声で言った。「夏目星澄、君は私を騙していた。」

夏目星澄は眉をしかめた。

突然そんな言葉を投げかけられた意味が分からなかった。

彼女は慎重に尋ねた。「私が何を騙したというの?」

「本当のことを言わないつもりか?」霧島冬真の表情は嵐の前の空のように暗く沈んでいた。

夏目星澄は少し怖くなって、「ヒントをくれない?」

「夏目星澄、よくもまだ知らないふりができるな。」

霧島冬真は彼女が事故に遭ったばかりで、しかも妊娠しているという事実がなければ、こんなに穏やかに向き合って話すことはなかっただろう。

夏目星澄は演技をしているわけではなく、本当に霧島冬真が何を言っているのか分からなかった。

まさか妊娠のことを知られてしまったのだろうか。

こんなにうまく隠していたのに......

そのとき、ノックの音が聞こえた。

霧島冬真は表情を引き締めて冷たく言った。「入れ。」

ドアが開き、大谷希真が一歩一歩入ってきた。彼は書類の入った封筒を持って霧島冬真の前に差し出した。「霧島社長、ご指示の件は弁護士が全て処理しました。」