第151章 彼女に何も起こってはいけない

夏目利道と岡田麗奈は、夏目星澄がこのような質問を突然するとは思っていなかった。

二人の顔に一瞬異様な表情が浮かんだ。

しかしすぐに普通の表情に戻った。

岡田麗奈は優しい表情で、「何を言ってるの、もちろんあなたは私たちの実の子よ。お父さんとお母さんがこうするのも、全部あなたのためなのよ」

「だって、あなたは離婚した女で、頼れる男性もいないし、まともな仕事もない。これからの生活が大変になるのは目に見えてるわ」

「私たちはあなたが困ったときに、助けてくれる人がいないのを心配して、お嫁に行く先を見つけてあげただけよ」

「向こうも特別な要求はないの。ただ嫁に行ったら、男の子を二人産んでくれれば、あなたの将来の生活は保証されるわ!」

彼らは普段ネットもテレビも見ないので、夏目星澄が芸能界で活躍していることを全く知らなかった。

まだ何もしない専業主婦だと思っていた。

以前、霧島冬真との結婚は、夏目星澄が勝手に決めたことだった。

結婚式もなく、まして結納金もなかった。

しかも霧島家の方々が手ごわい相手だということも知っていたので、お金を要求しに行く勇気もなかった。

ただ普段から、夏目星澄に親孝行させることしかできなかった。

想像していたほど多くはなかったが、年間一億円あれば彼らの生活費には十分だった。

しかし今、夏目星澄が突然離婚し、財産分与も何も得られなかった。

だから彼女を再婚させて結納金を得るしかなかった!

聞いた限りでは、まるで夏目星澄のためを思っているかのようだった。

しかし彼女自身にはわかっていた。

彼らのすることは全て、愛する息子の夏目晴貴のためだった。

夏目星澄は夏目晴貴とあまり連絡を取らないようにしていた。

しかし彼のSNSでの贅沢な投稿は、よく目にしていた。

夏目晴貴はいつも高望みばかりする人間で、まともな仕事はせず、起業にこだわっていた。

大学を卒業するとすぐに、家族から300万円を起業資金として受け取った。

しかし3ヶ月も経たないうちに、全てを失ってしまった。

それでも諦めず、一ヶ月後には新しいプロジェクトを見つけたと言い出し、いきなり500万円を要求してきた。

夏目家にはそれほどの金はなく、夏目星澄に目をつけることになった。

夏目星澄も当時、霧島冬真に迷惑をかけたくなかった。