第164章 私が考えすぎだった

霧島冬真は車を路肩に停め、深い眼差しで夏目星澄を見つめながら、大谷希真に電話をかけた。

「大谷君、夏目さんに私たちがここに来た理由を説明してくれ」

大谷希真はほとんど躊躇することなく答えた。「三ヶ月前にプロジェクトマネージャーがここで観光開発を提案し、社内の手続きもほぼ完了して、現地視察と町長への事前通知が必要だったからです」

「本来なら霧島社長は別の都市に出張の予定でしたが、あいにく雷雨で陽ノ空港で足止めされ、急遽町に一泊することになりました。ところが町長が霧島社長の来訪を知り、会社からの視察だと思い込んで、どうしても二日間滞在してほしいと」

「ただ、夏目さんもここで...観光されているとは思いもよりませんでした」

観光開発プロジェクトは確かに実在したが、霧島社長自身が視察する必要はなかった。