第165章 霧島冬真から女を奪うなんて誰も敢えて!

夏目星澄は携帯を見つめ、深いため息をついた。

彼に完全に諦めてもらうしかないようだ。

携帯を持って階段を降り、民宿の近くの小川のほとりまで来た。

三浦昇汰は背を向けていたが、足音を聞いて振り返った。「星澄、こんな遅くに呼び出してすみません。」

夏目星澄は彼の横に来て尋ねた。「大丈夫です。何か話があるんですか?」

三浦昇汰は苦笑いを浮かべた。「両親が見合いと結婚を急かしていて、何人も女性を紹介されたんですが...僕はどうしてもあなたのことが忘れられなくて。最後にもう一度聞かせてください。私たちには本当に可能性はないんでしょうか?」

夏目星澄は毅然とした態度で断った。「好意は嬉しいですが、本当に申し訳ありません。今は新しい恋愛関係を受け入れる余裕がないんです。」

三浦昇汰の目には失望と諦めきれない思いが浮かんでいた。「民宿のおばさんから聞いたんですが、あなたは旦那さんが亡くなったからここで気晴らしをしているそうですね。彼はそんなにも素晴らしい人だったんですか?再婚も考えられないほど?」

夏目星澄は率直に答えた。「彼は...実はそれほど素晴らしい人ではありませんでした。ごく普通の人で、気分屋で、短気な人でした。でも、あなたをお断りするのは彼のことが忘れられないからではなく、主に子供と二人で気ままに暮らしたいからなんです...」

ここまで話が進んだ以上、三浦昇汰もこれ以上は強要できなかった。「そうですか...もう言うことはありません。では、失礼します。」

しかし、立ち去ろうとする直前に、彼は突然尋ねた。「霧島社長はあなたのことを...」

実は霧島冬真が民宿に引っ越してきたと知ってから、ずっと聞きたかったのだ。霧島社長は彼女に何か思いがあるのではないかと。

霧島冬真が星澄を見る目つきが普通ではないように感じていた。

夏目星澄は霧島冬真と自分の間には何の関係もないと言おうとした。

その時、二人の後ろから極めて冷淡な声が聞こえてきた。「私は彼女に興味はない。彼女のお腹の子供に興味があるんだ。」

夏目星澄の体が一瞬固まった。

なぜ霧島冬真は彼女と三浦昇汰が二人きりでいる時にいつも現れるのだろう。

まさか彼女に何か監視装置でも付けているのだろうか?

三浦昇汰は驚愕した。「霧...霧島社長、今なんとおっしゃいました?」