夜。
夏目星澄は特に何も準備せず、カジュアルな服装のまま外出した。
しかし、数歩も歩かないうちに、突然走り出てきた小さな男の子が持っていたチョコレートアイスクリームで服を汚されてしまった。
男の子の母親は状況を見て、何度も謝罪し、クリーニング代を支払うと申し出た。
夏目星澄は大丈夫だと言い、お金も受け取らなかった。
結局、男の子も故意ではなかったのだから。
しかし、今彼女が持っているのはこの服だけで、他の服は全て洗濯中で、早くても明日にならないと乾かない。
裸で行くわけにもいかないし...
志田十月が夏目星澄を訪ねてきた時、ちょうどこの場面を目撃した。
今から服を買いに行くのは間に合わない。
「星澄さん、よければ私の服を着てみませんか。」
夏目星澄は志田十月の部屋についていった。
服はたくさんあった。
しかし、彼女に合うものは一つもなかった。
志田十月はまだ20歳で、青春真っ盛りで美しさを追求する年頃だった。
服もすべて可愛くてセクシーなものばかり。
しかし、妊娠して3ヶ月近い夏目星澄には、とても似合わない。
志田十月は自分の服を夏目星澄に何度も合わせてみた。
やはり似合わないと感じ、「だめですね、星澄さん。私の服は全部あなたの雰囲気に合わないみたいです。着ても違和感がありそうです。」
夏目星澄は部屋を見回して、「じゃあ、あのスポーツウェアでいいんじゃない?どうせ食事だけだし、そんなにきれいに着飾る必要もないでしょう。」
「それは絶対だめです。あなたは私たちの民宿の代表なんです。それに、こんなに綺麗な人なのに、私の服であなたの魅力を下げるわけにはいきません。ちょっと考えさせてください。」
志田十月は考えながら別の部屋に行き、墨色の新中国風の服を持って戻ってきた。「星澄さん、これはどうですか?」
夏目星澄の目が輝いた。「この服はどこから?」
志田十月はすぐに服を彼女に渡した。「母の衣装ダンスから出してきたんです。新品なので、早く試着してみてください。」
夏目星澄は他人の服を着ることにまだ抵抗があった。「澪乃さんは知ってる?」
志田十月は夏目星澄を浴室に押し込んだ。「母に話しましたよ。むしろ母が貸してあげてと言ったんです。星澄さん、早く着替えてください。遅れちゃいますよ。」
夏目星澄はようやく安心して服を着替えた。