大谷希真はすぐに、その職務怠慢の警備員を連れてきた。
警備員は霧島冬真の鉄のように青ざめた顔を見た瞬間、昨夜の出来事がばれたことを悟った。
彼は直接霧島冬真の前に跪き、許しを請うた。「申し訳ございません、社長。私の不始末でした。二度とこのようなことはございません。もう一度チャンスをください。」
霧島冬真は些細な過ちも見過ごさない性格で、夏目星澄を危険に晒しかけた警備員を、自分の側に置き続けることなど到底できなかった。
「使えない屑め。夏目星澄を守れと命じたのに、こんな初歩的なミスを犯し、事が起きても真っ先に報告せず、私を騙そうとするとは。よくもそんな図々しいまねを!」
彼がこれほど激怒するのは久しぶりだった。
その端正な顔は水を絞れるほど険しかった。
周囲の空気は恐ろしいほど重かった。
部屋は静まり返っていた。
誰も息を潜めて声を出す者はいなかった。
警備員は即座に自分の頬を何度も激しく叩いた。
霧島冬真を怒らせた結果がどれほど深刻なものになるか、彼は目の当たりにしていた。
彼はまだ死にたくなかった。
そこで優しい心の持ち主である夏目星澄に助けを求めた。「若奥様、どうか霧島社長に一言お願いしてください。この仕事を失うわけにはいきません。養わなければならない家族がいるんです!」
夏目星澄は警備員が自分の顔を豚の頭のように腫れ上がらせているのを見て、同情の念を抱いた。
それに昨夜、彼女は警備員に黙っていると約束したのだ。
事態がここまで発展したのは、彼女にも責任の一端があった。
「もう、いいんじゃない?彼も故意にやったわけじゃないし、上には年老いた親がいて下には子供もいるのよ。私のせいで彼の家族まで巻き込むなんて、良心が許さないわ。」
霧島冬真がそう簡単に許すはずもなかった。「過ちを犯した者は罰を受けるべきだ。大谷希真、わかっているな。」
大谷希真も緊張した面持ちで頷いた。「はい、社長。」
彼は床に倒れている警備員を引き起こした。「行こう。」
警備員は一瞬にして死人のように青ざめた。
夏目星澄はその様子を見かねて、もう一度説得を試みた。「待って、霧島冬真。私のためでなくても、お腹の子のために、善行を積んで、今回だけは許してあげて。」