夏目星澄が借りているアパートは6階にあった。
もし彼女一人であれだけの荷物を持って階段を上がるのは確かに大変だっただろう。
後ろで霧島冬真が手伝ってくれたおかげで、随分と楽になった。
玄関に着くと、夏目星澄はすぐにドアを開けずに、後ろの霧島冬真の方を振り向いて言った。「荷物を持ってくれてありがとう。もう家に着いたから」
しかし霧島冬真は帰る気配を見せず、「ああ、どういたしまして」と答えた。
二人は目を合わせた。
夏目星澄の方が先に目を伏せ、「あの...もう帰っていいよ」
「随分と薄情だね。こんな暑い日に親切に荷物を家まで運んでやったのに、水一杯くらい出してくれないのか」
夏目星澄は少し黙った後、頷いて「わかったわ」と言った。
彼女は鍵を取り出してドアを開け、家の中に入った。