第181章 私にだけ強気になるのか

夏目星澄はスーパーで日用品を買い込んで帰宅した。

家の玄関に着くと、彼女は一目で霧島冬真の控えめで豪華なロールスロイスを見つけた。

すぐに霧島冬真が車から出てきた。

彼女の買い物袋を持つ手が赤くなっているのを見て、眉をひそめ、直接買い物袋を自分の手に取り、冷たい声で文句を言った。「こんなにたくさん買って何するんだ。俺のところには何でもあるのに」

夏目星澄は困ったように言った。「私が買い物をするのは必要だからよ。あなたのところに何でもあるのは私には関係ないでしょう」

「荷物を返して。自分で持てるわ」

「夏目星澄、お前は今妊婦なんだぞ。重いものを持っちゃいけないって分からないのか?」

「分かったわ。じゃあ妊婦の面倒を見る善行を積んでくれたってことにしておくわ。ありがとう」

夏目星澄はそう言うと、霧島冬真を無視して真っすぐ中へ入っていった。

しかし数歩進むと、周りの人々が彼女の方を見ているのに気づいた。

しかも露骨な視線で。

夏目星澄は分かっていた。これは全て後ろにいるあの男が引き寄せたものだと。

しかし「蜂や蝶を引き寄せる」当の本人である霧島社長は、周りの視線など全く気にしていないようで、悠々と夏目星澄の買い物袋を持って、彼女の横を歩いていた。

歩いているうちに、彼は突然足を止め、星澄に尋ねた。「あの人は誰だ?」

霧島冬真が指していたのは、団地の花壇の縁に座っている老婦人だった。

その老婦人こそ、彼女が外出した時に、パトロンを持っていると言った人物だった。

彼女の周りには同年代の人々が座っていた。

彼女たちは何かを話し合っており、とても夢中になっているように見えた。

ただ田中お婆様だけは、近づいてくる夏目星澄と霧島冬真をじっと見つめており、その眼差しは好ましくないものだった。

夏目星澄はすぐに眉をひそめた。「知らないわ。放っておいて」

霧島冬真の目が微かに動いた。

夏目星澄はいつも年配者に対して敬意を払っており、知っているか知らないかに関わらず、年上の方には常に良い態度で接していた。

しかし今日のように人を見るなり眉をひそめるのは、本当に珍しいことだった。