第190章 誠意が全くない

梁川千瑠は顔色を失った。霧島冬真が彼女にこれほど冷たく無情になるとは、まったく予想していなかった。

「冬真さん、どうしてですか?私たちは幼なじみで、ずっと仲が良かったじゃないですか。あなたが意識不明だった時も、母に強制されて離れたのに、あなたは私を許してくれたのに、どうして私と結婚できないんですか?」

霧島冬真は鋭い刃物のような冷たい目で言った。「理由は簡単だ。私はお前を愛していない」

彼は梁川千瑠に現実離れした期待を持たせたくなかった。

はっきりと言い切ることにした。

梁川千瑠は天から落とされたような衝撃を受けた。「いいえ、そんなはずない。冬真さん、どうして私を愛していないなんて...子供の頃、一生私の面倒を見てくれると約束したじゃないですか。私が戻ってきてから、夏目星澄とさえ離婚したじゃないですか。それが全てを物語っているんじゃないですか?」

「離婚は俺の勝手だ。お前には関係ない」

霧島冬真はそう言い放つと、千瑠の泣き叫ぶ声も無視して、大股で執務室を後にした。

なぜなら、自分が今まで彼女に過度に関わりすぎていたことに気づいたからだ。

それが彼女に自分が特別な存在だと思わせ、果ては妻になれると妄想させてしまった。

霧島冬真はエレベーターで一階に降りた。

夜勤の警備員以外は誰もいなかった。

警備員は霧島冬真を見るなり、背筋をピンと伸ばした。「霧島社長、こんばんは」

「食事を届けに来た女性を見なかったか?」

「はい、大谷補佐の指示通り、そのまま上がっていただきました」

霧島冬真は眉をひそめ、警備員の言う女性が梁川千瑠だと思い至った。

「彼女以外には?」

警備員は少し考え、躊躇いながら答えた。「もう一人いました。デリバリーの人かと思って入れなかったんですが、そのまま帰られてしまって...」

霧島冬真の表情は一層冷たくなった。「何も言わずに帰ったのか?」

「はい」警備員は困惑した様子で、なぜ霧島冬真がデリバリーの人にそれほど興味を示すのか理解できなかった。

霧島冬真は突然、自分の今夜の行動がいかに愚かだったかを悟った。夏目星澄が食事を持ってくると言ったからといって、ずっと待ち続けていたなんて。

さらには彼女が梁川千瑠を見て誤解するのを恐れ、わざわざ階下まで迎えに行こうとしたのに。