梁川千瑠は最近、どうしても霧島冬真と連絡が取れないことに気づいた。
母親の件で恨まれているのではないかと心配になり、霧島グループの社員に金を渡して、毎日冬真の行方を報告させていた。
ようやく今日、彼が一人で深夜まで残業していることを知った。
まさに温かい気持ちを伝え、愛を表現するのにぴったりのタイミングだった。
実は彼女は以前も何度か来たことがあったが、いつも警備員に止められていた。
今回は金で買収しようと考えていたのに、警備員は彼女を一目見るなり中に通してくれた。
今日は本当にいいタイミングで来たようだ!
梁川千瑠を通した警備員は新人で、彼女のことを知らなかった。
ただ社長秘書の指示通り、後で社長夫人が来たら止めずに直接通すようにと言われていただけだった。
だから可愛らしい顔立ちで、おしゃれな服装をし、エルメスのバッグを持った梁川千瑠を見たとき、自然と彼女が社長夫人だと思い込んでしまった。