霧島冬真は十五分間もマッサージを続けてから、ゆっくりと手を放した。
夏目星澄は感謝の気持ちを込めて言った。「マッサージをしてくれてありがとう。意外と上手いのね。いつ覚えたの?」
霧島冬真は深い眼差しで彼女を見つめ、「車椅子に乗っていた頃、君が毎日マッサージをしてくれていたから、見て覚えたんだ」と答えた。
夏目星澄もすぐに思い出した。
あの頃の霧島冬真は本当に手がかかった。
彼女を追い払うために、色々と命令していた。
でも彼女は全て耐え、文句も言わずに彼の世話をした。
彼の両足の回復を少しでも良くするために。
漢方医からマッサージも習った。
霧島冬真はその時、無駄な努力だと言った。彼の両足には感覚がないのだから、マッサージしても意味がないと。
でも彼女はそうは思わず、毎日欠かさずマッサージを続けた。