第226章 彼女を苦しませるわけにはいかない

霧島冬真は夏目星澄のまだ少し青ざめた顔色を見て言った。「私は前から梁川千瑠にはっきり伝えていた。私と彼女は結婚できないと。まさか彼女があなたに目をつけるとは思わなかった。でも心配しないで、私はすでに弁護士に訴訟の準備を依頼した」

夏目星澄は霧島冬真が梁川千瑠のために情状酌量を求めるのかと思っていたが、まさか彼が口を開いた途端、弁護士に訴訟を起こさせると言うとは。

でも彼は以前、梁川千瑠にあれほど優しかったのに、本当にそこまでできるのだろうか?

それとも彼女の前で演技をしているだけなのか。

夏目星澄は眉をひそめ、試すように尋ねた。「本当に梁川千瑠を刑務所に入れるつもりなの?」

霧島冬真は頷いた。「彼女は犯してはいけない過ちを犯した。法的な処罰を受けるのは当然だ」

彼が真面目な様子で言うのを見て、夏目星澄もある程度信じた。「もし本当にそう考えているなら、それが一番いいわ」

霧島冬真が梁川千瑠を助けなければ、法律が公平な裁きを下してくれると信じていた。

霧島冬真は夏目星澄の目に不信感を見て取り、表情が冷たくなった。「私の言葉を信じていないのか?」

「信じていないわけじゃないの。ただ...私のためにそこまでする必要はないと思って」夏目星澄は霧島冬真が何故ここまで自分を助けるのか分からなかったが、もう彼に恩を受けたくなかった。

霧島冬真は目を伏せて彼女をじっと見つめた。「何が必要ないだ。夏目星澄、そんなに私との関係を切りたいのか?」

「私は...」夏目星澄は突然言葉を詰まらせた。彼女の心は何かに刺されたように痛んだ。

彼女は関係を切ろうとしているのではない。もともと二人の間には何の関係もないのだ。

夏目星澄は居心地悪そうに苦笑いを浮かべた。「私のお腹の子供があなたと血のつながりがある以外に、私たちの間に何か切るべき関係があるの?」

「それはどういう意味だ?」

「何も意味はないわ。疲れたから、休ませてもらうわ」

夏目星澄はこれ以上議論したくなかった。そのまま横になり、布団をかぶって霧島冬真に背を向けた。

霧島冬真は夏目星澄にはっきりと話をさせたかったが、彼女が話したくない様子を見せ、無力感を感じた。

結局何も言わずに病室を出て行った。