夏目星澄は彼を無視しようとした。
しかし、霧島冬真は彼女を抱き上げた。
夏目星澄は怒って彼の胸を二回叩いた。「降ろして、自分で歩けるわ」
霧島冬真は平然と言った。「ダメだ。もし足が再び攣って、痛くて立てなくなって転んだらどうする?私は子供を危険にさらすわけにはいかない」
こうして夏目星澄はベッドまで抱かれて戻された。
そして、傍らの毛布を引っ張って彼女にかけ、先ほど飲み残したジュースを彼女の口元に持っていった。「フレッシュジュースだ、飲んでみて」
夏目星澄は少し困った様子で「私は妊娠してるだけで、麻痺してるわけじゃないわ。自分で動けるし、歩けるの。何でも手伝わなくていいのよ」
ジュースを飲むのも口元まで運んでくる。このままだと、食事の時も霧島冬真が一口一口食べさせようとするんじゃないの?
霧島冬真は当然のように理由を述べた。「でも母さんが、妊娠中の女性は大変だから、しっかり面倒を見なさいって」
夏目星澄はそこまでする必要はないと思った。「安心して、そんなに脆弱じゃないわ。自分でも十分に自分の面倒を見られる。それより、あなた、仕事は忙しくないの?私のところで時間を無駄にしないで。一人で過ごしたいの」
しかし霧島冬真は去らなかった。
彼は静かに夏目星澄を見つめ、ゆっくりとベッドの前に座り、静かに言った。「星澄、話をしよう」
夏目星澄は不思議そうに霧島冬真を見た。
彼は化粧台の椅子を窓際に持ってきて、座った。
両肘を膝に置き、体を前に傾け、彼女の方向に向かって、とても近くに。
彼女は自分の姿が彼の瞳に映るのがはっきりと見えるほど近くに。
それは守護者の姿勢だった。
まるで彼の心も目も、すべて彼女という人物で満ちているかのように。
夏目星澄の心は思わずときめいた。
彼女は無意識に目を逸らし、なぜか居心地が悪くなった。「話すなら話して。そんなに近づかないで」
霧島冬真は自分でも気付かないうちに、口角が一瞬上がり、すぐに消えた。
「わかった。話す。私はいくつかのことで十分な配慮ができていなかったことを認める。君の気持ちを考えずに、多くの辛い思いをさせてしまった。特に結婚前のあの件で、君を誤解してしまったことを謝りたい」
夏目星澄は男の突然の謝罪に戸惑いを感じた。