霧島雪栄は霧島冬真のところで憤りを感じたものの、反撃する勇気もなく、霧島家の実家へと向かった。
両親がいれば、早川悠真も彼女に手出しはできないはずだった。
しかし、実家の門に着いたとたん、早川晴乃から電話がかかってきた。「お母さん、早く帰ってきて!お父さんが私を殺そうとしているの!」
「何ですって?外で数日過ごすように言ったのに、なぜ家に戻ったの?」霧島雪栄は早川悠真が早川晴乃に八つ当たりするのを恐れ、わざと友人の家に数日身を寄せるよう指示していた。
まさか、こんなに愚かにも家に戻るとは。
早川晴乃は悔しそうに泣きながら言った。「帰りたくなかったのよ。でも友達の家に泊まるなら、ただというわけにはいかないでしょう?何か買って行かなきゃいけないのに、銀行カードもクレジットカードも全部使えなくなってたの!しかも友達の前で、恥ずかしくて死にそうだった。とても人の家には泊まれないわ」
「家に戻ってアクセサリーを売って、ホテルに泊まるお金を作ろうと思ったの。でも、そのときお父さんが帰ってきて、あなたが見つからないから私に八つ当たりして...さっき、誰かが余計なことを言って、私と花井風真との婚約破棄のことを話してしまったの」
「お父さんが怒り狂って、私を二度も平手打ちして、あなたが戻ってこなければ私の足を折ると言うの。お母さん、お願い、帰ってきて。私、本当に怖いの!」
霧島雪栄は早川晴乃を心配し、自分も恐怖で震えていたが、覚悟を決めて早川家に戻った。
家に入るなり、ソファに座って暗い表情を浮かべる早川悠真の姿が目に入った。
霧島雪栄は動揺を隠せず、「ごめんなさい、あなた。帰りが遅くなって」
「よく帰ってきたな。俺が要求した金はどうなった?いつ入金される?」早川悠真は拳を握りしめながら問いただした。
霧島雪栄は霧島冬真と対立したことなど、とても言えなかった。
「そのお金は...二、三日後になりそうです。銀行で少し問題が...」
早川悠真は目を見開き、手元のコップを床に叩きつけながら怒鳴った。「馬鹿にしているのか!俺はもう調べてある。お前の大事な甥っ子が、お前の全口座を凍結して、一銭も引き出せないようにしたんだろう!」
「違うの、冬真が私のことを少し誤解しているだけよ。二、三日したら説明して解決するから、信じて」