第254章 もう一度チャンスをください

夏目星澄は忙しさか疲れからか、急に頭がくらくらしてきた。

彼女は林田瑶子に小声で言った。「少し疲れたから、上の階で休んでくるわ。」

林田瑶子は頷いた。「ええ、休んでいってね。私も忙しいのが終わったら、そちらに行くわ。」

夏目星澄は静かに宴会場を後にした。

二階の廊下の窓が開いていた。

ちょうど風が吹いてきた。

夏目星澄は思わずくしゃみをした。

最近は気温が下がってきているので、体を温めるように気をつけないと。風邪を引いたら、お腹の子供にも影響があるから。

でも上着は車の中に忘れてきてしまい、取りに行くのも面倒だった。

休憩室の中に、暖かくなれるものがあるかどうか分からない。

彼女が休憩室のドアノブに手をかけた瞬間。

男性用のスーツが彼女の肩に掛けられた。

夏目星澄はその服から馴染みのある香りを嗅ぎ、振り返ると、やはり霧島冬真だった。