夏目星澄は忙しさか疲れからか、急に頭がくらくらしてきた。
彼女は林田瑶子に小声で言った。「少し疲れたから、上の階で休んでくるわ。」
林田瑶子は頷いた。「ええ、休んでいってね。私も忙しいのが終わったら、そちらに行くわ。」
夏目星澄は静かに宴会場を後にした。
二階の廊下の窓が開いていた。
ちょうど風が吹いてきた。
夏目星澄は思わずくしゃみをした。
最近は気温が下がってきているので、体を温めるように気をつけないと。風邪を引いたら、お腹の子供にも影響があるから。
でも上着は車の中に忘れてきてしまい、取りに行くのも面倒だった。
休憩室の中に、暖かくなれるものがあるかどうか分からない。
彼女が休憩室のドアノブに手をかけた瞬間。
男性用のスーツが彼女の肩に掛けられた。
夏目星澄はその服から馴染みのある香りを嗅ぎ、振り返ると、やはり霧島冬真だった。