第255章 霧島社長のことを少しは哀れんでください

大谷希真は大学卒業後から霧島冬真の下で働き始め、彼の性格をよく理解していた。

さらに霧島冬真と夏目星澄との間の感情のもつれも知っていた。

当然、上司が最近行っていることは全て若奥様の心を取り戻すためだということも分かっていた。

そのため、優秀な秘書として、上司の心配事を解決する手助けをしなければならない。

大谷希真は苦い表情で説明した。「若奥様、あなたと社長が離婚されたことは存じております。社長の面倒を見る義務はないことも分かっています。でも、ご存知の通り、社長は胃の調子が悪かったのですが、あなたと結婚してからは、丁寧な看病のおかげでずいぶん良くなっていたんです。」

「ところが、離婚されてから、また昼夜を問わず仕事をするようになり、時には食事も取らず、胃痛が起きても適当に薬を飲んで済ませるだけで、日々重症化していったんです。」

「そして今回の発作も、あなたのためなんです。」

夏目星澄は大谷希真の言葉が理解できなかった。「彼の胃痛が私に何の関係があるの?自分の体を大切にしないのは彼自身でしょう。」

彼女は霧島冬真に胃の病気があることを知ってから、あらゆる方法で彼の胃を改善しようとした。

食事療法も薬物療法も全て試した。

やっと良くなったと思ったのに、また発作が起きた。

それは彼の自業自得だ!

「本当にあなたのためなんです。先週は七夕でしたよね。社長はあなたにプレゼントを贈りたくて、わざわざパリまで飛行機で行き、10カラットのピンクダイヤモンドを買って、自らデザインして彫刻までしました。3日間も眠らず、ほとんど食事も取らず、その時から胃の調子が悪くなっていたんですが、気にせず、時間に間に合わせてあなたにプレゼントを届けたかったんです。」

夏目星澄は眉をひそめた。七夕の日、彼女は霧島冬真に会っていないし、プレゼントなど受け取っていない。

「そのプレゼントが私のものだと、どうして分かるの?他の女性のかもしれないでしょう。」

「間違いなくあなたへのものです。ブレスレットで、あなたの名前のイニシャルが刻まれています。なぜ社長があなたに渡さなかったのかは分かりませんが、今でも社長のオフィスに置いてあります。信じられないなら、今すぐ持ってきてお見せしますが。」