霧島峰志は自分の耳を疑い、もう一度尋ねた。「子供のことだが、本当なのか?」
霧島冬真は頷いた。「もちろん本当だ。子供のことで冗談を言うと思うか?」
霧島峰志は、息子が離婚後ずっと再婚の話を出さず、自分が手配した見合いにも応じなかった理由が分かった。
すでに気に入った女性がいたのだ。
「その女性は誰だ?私は知っているのか?どこのお嬢様だ?」
「夏目星澄だ」
霧島峰志の浮かべかけた笑顔が一瞬で凍りついた。「何だって?夏目星澄の子供だと?いつから彼女と付き合っていたんだ?」
「それはあなたが気にすることではない」
「お前たちは離婚したはずだ。本当にお前の子供だと確信があるのか?」
霧島峰志は、身分の低い、手段を選ばず上り詰めようとする夏目星澄のような女性を軽蔑していた。
霧島冬真は冷ややかな目で父を見つめ、まるで無駄な質問だと言わんばかりだった。
霧島峰志も自分の質問が無意味だったことに気付いた。
こんな重要なことで、霧島冬真が間違えるはずがない。
離婚までしたのに、まだ夏目星澄のことを気にかけているのも納得できた。
「たとえ夏目星澄が本当にお前の子供を妊娠しているとしても、子供を産んで霧島家に連れてくるまで待ち、それなりの補償金を渡せばいい。絶対に再婚などあり得ない」
霧島峰志にとって、霧島家の血筋が何より重要だった。
しかし霧島冬真はこの話題を続けたくなかった。「私のことは心配しなくていい。もう帰ってくれ」
「大谷君、お客様を」
大谷希真はすぐに霧島峰志の腕を支えた。「霧島会長、申し訳ありません。社長はまもなく重要な会議がございますので、私がお送りいたします」
霧島峰志はまだ子供のことについて聞きたかったが、大谷希真に上手く言いくるめられて外に送り出された。
最後まで霧島冬真の言葉が気になり、部下に調査を命じた。
すぐに調査結果が出た。夏目星澄は確かに妊娠しており、それも霧島冬真との離婚直後のことだった。
夏目星澄のことは好きになれなかったが、彼女のお腹の子供は、霧島家として必ず手に入れなければならなかった。
そのとき、梁川英夫から突然電話がかかってきて、霧島冬真との結婚について追及してきた。「峰志君、うちの千瑠と冬真君の結婚はいつ決めるつもりだ?」
彼の家の老人が亡くなってから。