霧島グループの五十周年記念パーティーは、系列のインペリアルホテルで開催された。
宴会場は人で溢れかえっていた。
梁川千瑠は会場に到着するなり、霧島冬真の姿を探し始めた。
このパーティーの主役である霧島冬真は、当然ながら全ての人の注目の的だった。
彼は漆黒のオーダーメイドスーツを身にまとっていた。
凛とした気品のある姿勢、彫刻のように端正な顔立ち、その存在自体が眩い輝きを放っていた。
周りの誰もが彼の存在感には及ばなかった。
このように頂点に立つ男性は、どんな女性が見ても心がときめくはずだった。
もし4年前のあの突然の事故がなければ、幼なじみの二人は才色兼備の良い夫婦になっていたはずだった。
そうすれば、夏目星澄というあの忌々しい女のことなど、何の関係もなかったはずだ。
今では霧島冬真が彼女に反感と嫌悪を示すようになっても、彼女の視線は思わず彼を追ってしまう。
霧島冬真は数人と挨拶を交わした後、ステージ中央で周年記念の挨拶を始めた。
その後、会社の幹部たちが続いた。
挨拶が終わり、余興が正式に始まった。
人数が多いため、パーティーはビュッフェ形式で行われた。
梁川千瑠は機会を見計らって、霧島冬真の前に近づいた。「冬真さん、さっきのスピーチ素晴らしかったわ。私、聞き入ってしまって...」
霧島冬真は冷ややかな目で彼女を一瞥しただけで、横を向いて立ち去った。言葉すら交わそうとしなかった。
梁川千瑠の顔は一瞬にして青ざめた。
心の中では悔しさで泣きそうになっていた。
周りの人々はこの光景を見て、小声で噂し始めた。
「やっぱり霧島冬真と梁川千瑠は本当に仲違いしたんだね」
「以前は業界で誰もが知っていたじゃない。梁川千瑠は霧島冬真の幼なじみで、彼が彼女をどれだけ大切にしていたか、みんな目にしていたのに」
「でも今じゃ梁川千瑠がどれだけ近づこうとしても、霧島社長は相手にもしないみたいね」
「それも当然よ。霧島社長が一番助けを必要としていた時に、こっそり海外に逃げ出したんだから。そんな恩知らずな女性を誰が娶りたいと思うでしょう!」
周りの噂話を聞きながら、梁川千瑠は下唇を噛みしめ、今にも泣き出しそうだった。