第269章 食事も水も取らない

林田真澄の説得により、霧島冬真は少し冷静さを取り戻した。

確かに梁川千瑠をすぐにでも始末することはできる。

しかし、その後の面倒も多くなるだろう。

特に今は夏目星澄が最も彼の世話を必要としている時だ。

霧島冬真は暗い表情で頷いた。「分かった。行こう」

林田真澄は心の中でほっと胸を撫で下ろした。霧島冬真を説得できて良かった。さもなければ、その結果は想像を絶するものになっていただろう。

霧島冬真は車のドアを開けた。

身を屈めて車に乗り込んだ。

彼は大谷希真に電話をかけ、指示を出した。「梁川千瑠を監視する人員を配置しろ。この件は間違いなく彼女と関係がある。有力な手がかりが見つかり次第、すぐに警察に通報しろ。今度こそ彼女を刑務所に入れてやる!」

大谷希真は躊躇なく応答した。「承知しました、霧島社長。すぐに手配いたします」

一方、梁川千瑠は自室に隠れ続け、霧島冬真が突入してきて自分を殺すのではないかと恐れていた。

彼女は夢にも思わなかった。霧島冬真が彼女をここまで憎むとは。

外で車が去っていく音が聞こえるまで、梁川千瑠はようやくカーテンの端を持ち上げて下を覗いた。

霧島冬真が車で去っていくのを見て、やっと声を上げて泣き出すことができた。

しばらく泣いた後、彼女はゆっくりと恐怖心を落ち着かせ、梁川英夫に電話をかけた。「お父さん、どこにいるの?私、すごく怖いの。霧島冬真が先ほど車で私を轢き殺しそうになったの!」

梁川英夫はそれを聞いて、怒りに満ちた表情を浮かべた。「何てことだ。人を家まで追いかけてきて虐めるとは。怪我はないのか?」

梁川千瑠は涙声で、しょんぼりと言った。「体のあちこちが擦り傷だらけで、すごく痛いの」

彼女は恥ずかしくて、怖くて漏らしてしまったことは言えなかった。

「深刻なのか?病院に行く必要はあるか」

「そんなに深刻じゃないわ。後でお手伝いさんに薬を塗ってもらえばいいの。でも霧島冬真が私を許してくれないんじゃないかって怖いの」

梁川英夫は深刻な表情で言った。「きっとあの女が溺れて死にかけた件で、お前に八つ当たりしているんだ。もう国内にいるのは危険だ。H国のお祖母さんの所に行きなさい。彼女ならお前を守れる」

梁川千瑠は彼の唯一の娘だった。すでに息子を失っている彼は、娘までも失うわけにはいかなかった。

病院では。