第270章 本当に彼女を失いたくない

登坂萌乃は来るなり霧島冬真がいないことに気づき、何があったのか聞こうと思ったが、夏目星澄を見た瞬間にすべてを忘れてしまった。

今、霧島冬真が来て、彼女は思い出した。

霧島冬真は眉をひそめ、「会社で急な用事があって、ちょっと出かけていた」と言った。

梁川千瑠への復讐に行ったとは言えなかった。

「会社の用事が、星澄より大事なの?早く彼女の面倒を見てあげなさい。もう丸一日も何も食べていないのよ!」

何も食べていない?

それを聞いて、霧島冬真は急に心配になった。「どうして何も食べないの?まずかったの?何が食べたい?今すぐ買いに行かせるよ」

しかし夏目星澄は何も言わず、彼を見ようともしなかった。

登坂萌乃は夏目星澄のこの反応を見て、すぐに何かがおかしいと気づいた。

「星澄、また彼が何かしたの?おばあちゃんに言いなさい。叱ってあげるわ!」