第271章 夢の中での別れ

登坂萌乃は霧島冬真がまだ夏目星澄のことを愛していることがわかった。

彼女も心から二人の子供たちが和解できることを願っていた。

「冬真、もう起きてしまったことだから、今更後悔しても時間は戻らないわ。前を向いて、星澄のことを大切にして、もう二度と彼女を傷つけないで」

登坂萌乃は最後の言葉を残し、複雑な心境で去っていった。

霧島冬真が病室に戻ったとき、夏目星澄は眠っているようだった。

彼は小声で何度か呼びかけたが、反応がなかった。

様子がおかしいと感じ、すぐに医者を呼んだ。

医者が駆けつけて診察し、食事を取っていないため空腹で気を失ったと確認した。

そしてすぐに看護師に点滴の処置を指示した。

しかし、ずっと点滴だけでは良くならない。やはり食事を取らなければ、体は回復できない。

医者は注意事項を伝えて去っていった。

霧島冬真は夏目星澄の手を握りしめ、心の中で懺悔を繰り返していた。

「星澄、僕を哀れんで、もう一度チャンスをくれないか。お願いだから、慈悲として」

本当に、これが最後だから!

夏目星澄は空腹で気を失ったことに気付いていなかった。

当時はただ頭がぼんやりして、目も物がはっきり見えなかった。

徐々に暗闇に包まれ、何も分からなくなった。

しかし、そんな状態でも、最も起こってほしくないことが起きてしまった。

夏目星澄は突然呼吸が困難になった。

周りは水ばかりで、どんなに助けを求めても、誰も現れなかった。

彼女の心は少しずつ沈んでいった。

手足も徐々に硬直していった。

もう死にそうだと感じた瞬間。

突然、温かい小さな手が彼女を掴んだ。

そして光が彼女の体を照らした。

強い光で目を開けることができなかった。

幼い可愛らしい声が耳元で響くまで、「ついておいで」

次の瞬間、夏目星澄は遊園地にいた。

彼女は少し困惑し、なぜここにいるのか分からなかった。

しかしすぐに、小さな人影が近づいて来て、彼女の手を取った。「メリーゴーラウンドに乗りたいの。一緒に乗ってくれる?」

夏目星澄は目を伏せると、可愛らしい男の子がいた。

彼女は少し屈んで、男の子の手を優しく握った。「坊や、お父さんとお母さんはどこ?」

男の子は首を振り、後ろのメリーゴーラウンドを指さして、甘い声で言った。「乗りたい」