第287章 あなたは彼女に及ばない

夏目星澄がどれほど悲しく辛いことを話しても、梁川千瑠には全く共感できなかった。

「もういいわ、夏目星澄。そんなに言うのは私に罪を認めさせたいだけでしょう。でも、やってないものはやってないわ」

「それに、もう私を追い詰めないで。私はうつ病なのよ。精神が不安定で、死にたいの。私が死んだら、あなたが殺人犯よ。私は幽霊になってもあなたを許さないわ!」

それを聞いて、夏目星澄は一瞬固まった。梁川千瑠がうつ病だということを忘れていた。

帰国したばかりの頃は、自殺騒ぎを起こしていた。

でも彼女は、梁川千瑠のうつ病が嘘だと疑っていた。

霧島冬真の同情を引くためだけに使っているように思えた。

夏目星澄は不機嫌そうに眉を上げた。「あなたがうつ病だと言えば、本当にそうなの?」

梁川千瑠の目には得意げな色が浮かんだ。「これは私が言っているんじゃないわ。病院の証明書があるの。だから警告しておくけど、私に優しくした方がいいわよ。追い詰められたら、死んでみせるから!」

夏目星澄は軽蔑的に冷笑した。「また自殺騒ぎね。それがあなたの常套手段だってわかってるわ。でも場所を間違えたみたいね。ここは警察署よ、あなたの芝居をする場所じゃない。専門医を呼んで、心理テストをして、本当にうつ病かどうか判定してもらうわ。本当にうつ病だといいわね、でなければ...」

梁川千瑠はもちろんどんなテストも受けたくなかった。「でなければどうするの?私の命が欲しいの?言っておくけど、あなたに私をテストする資格なんてないわ。あなたなんて信用できない!」

一人の警察官が突然口を開いた。「夏目さんを信用できないなら、私たち警察を信用するべきでしょう。警察署には専門の心理カウンセラーがいます。呼んでくることができます」

梁川千瑠は深い皮肉を込めて言った。「警察を信用する?笑わせないで。さっき夏目星澄が私を殴ったのに、あなたたちは何もしなかったじゃない。今度は何か心理カウンセラーを呼んで私をテストするって?あなたたちは明らかに一味同心で、でっち上げの罪を私になすりつけようとしているのよ!」

現場の警察官たちの表情が硬くなった。

確かに夏目星澄は先ほど感情的になりすぎて、暴力を振るうべきではなかった。

しかも、ここには監視カメラがあり、すべて録画されている。