夏目星澄は霧島冬真にどう答えればいいのか分からなかった。
彼女の心は今、とても乱れていた。
しかし、包帯を巻かれた体で彼女のそばを離れようとしない霧島冬真の哀れな姿を見て、結局追い払う決心がつかなかった。
霧島冬真は夏目星澄が黙っているのを見て、承諾したものと受け取り、すっかり嬉しそうになった。
しかし、彼が夏目星澄ともっと親密になろうとした矢先。
医者が入ってきて、二人の体を診察すると言い出した。
霧島冬真は顔を険しくした。なんて空気の読めない医者だ。
しかし、夏目星澄の機嫌を損ねるのが怖くて、怒りを表に出すことはできなかった。
医者の診察が終わると、夏目星澄は突然ある問題に気付いた。
二人でずっと同じベッドに寝ているのは、あまりにも不自然に見える。
しかも、もうすぐ誰かが見舞いに来るかもしれない。
早めに離れた方がいい。
夏目星澄は頭を下げ、まだ自分と甘い時間を過ごしたがっている霧島冬真を見て、「あなたのベッドに戻って横になって」と言った。
霧島冬真は彼女と離れたくなくて、「だめだよ、星澄。医者も言ったでしょう、安静にしなきゃいけないって。動けないんだ」
夏目星澄も無理強いはせず、唇を噛んで、自分でベッドから降りた。
それを見た霧島冬真は慌てて、「星澄、どこに行くの?」
まさか彼のもとを離れようとしているのではないか?
夏目星澄は彼を横目で見て、「トイレよ。霧島社長に報告が必要?」
霧島冬真はやっと安心して、隣の場所を叩いて、「ああ、それなら大丈夫。行ってきて、待ってるから」
しかし夏目星澄が戻ってきたとき、彼女は別の空いているベッドに横になった。
霧島冬真は焦り始めた。「星澄、どうしてそっちに寝るの?ここに場所空けてあるのに」
夏目星澄は首を振って、「あなたは一人で寝て。私はここで十分よ」
彼女は今、霧島冬真をそれほど憎んではいないが、だからといって彼が過去にしたことを許したわけではない。
少し距離を置くのがいい。
そうすれば、彼女の心も落ち着くだろう。
しかし霧島冬真は自分の怪我も顧みず、夏目星澄と一緒に寝たがって、歯を食いしばって起き上がろうとした。
夏目星澄は今度は本当に怒って、「もし動き回るなら、私は別の病室に行って、あなたに会わせないわよ」