十分後、大谷希真は救助隊を率いて霧島冬真と夏目星澄を見つけた。
しかし、二人とも意識を失っていた。
そして、二人は抱き合ったまま、妙に艶めかしい姿勢で倒れていた。
救助隊の人々は二人を引き離すことができなかった。
最後には仕方なく、そのまま救急車に乗せた。
大谷希真は車内で感慨深げに思った。霧島社長は若奥様を取り戻すために命さえ顧みず、一緒に崖から飛び降りるなんて、本当に必死だった。
上から見ていた時は、ひやひやして仕方がなかった。
幸い、二人とも無事で生き延びた....
夏目星澄が目を覚ました時には、すでに病院にいた。
空気中には薄い消毒液の匂いが漂っていた。
夏目星澄は体がばらばらになったかのように、全身が痛かった。
左手も包帯でぐるぐる巻きになっていた。
少し不快に感じ、体勢を変えようとしたが、体を動かした途端、何かに押さえつけられているような感覚があった。
振り向いてみると、隣に横たわる霧島冬真の姿が目に入った。
霧島冬真の顔は紙のように白く、額には包帯が貼られていた。
体中も包帯でミイラのように巻かれていた。
それでもなお、大人しく横になることを拒み、体を横向きにして、点滴を打った手を夏目星澄の腰に回していた。
夏目星澄が動くと、彼は無意識に抱擁を強め、まるで彼女を失うことを恐れているかのように、大切そうに抱きしめていた。
「星澄...」霧島冬真の深みのある美しい顔は真っ青で、今は森の中で傷ついた野獣のように、夏目星澄に寄り添い、慰めを求めていた。
「星澄、僕から離れないで、お願いだから、離れないでくれ?」
夏目星澄は眠りながらも不安そうに自分の名を呼ぶ霧島冬真の声を聞いた。
表情が複雑になった。
突然、霧島冬真を憎むべきかどうか分からなくなった。
結婚した三年間、彼女は彼を深く愛していた。
一度も応えてもらえなかったにもかかわらず、それでも甘んじて受け入れ、一途に突き進もうとしていた。
しかし最後には散々な結末を迎えることになった。
夏目星澄は心が死んだように感じ、霧島冬真から遠ざかることを決意した。
しかし彼は命を賭けてまで、彼女の灰となった心を再び掬い上げようとした。
何度も拒絶し、酷い言葉を投げかけたというのに。