霧島冬真は緊張した表情で夏目星澄を見つめ、「星澄、大丈夫か?」
夏目星澄は驚きと喜びが入り混じった表情で霧島冬真を見つめ、「私...私は大丈夫」
幸い、霧島冬真は日頃から体を鍛えていて反応が早かったため、夏目星澄は本当に...
しかし、これは彼らの最初の試練に過ぎなかった。
なぜなら、霧島冬真の体に巻かれたロープが二人の重みに耐えきれず、緩み始めていたからだ。
豪雨の襲来で、二人は身動きが取れなくなっていた。
霧島冬真の力も少しずつ消えていった。
彼は自分が持ちこたえられないことを恐れ、自分の体のロープを解いて夏目星澄に巻き付けようとした。そうすれば彼女は生き残れるはずだった。
夏目星澄はそれを見て、慌てて止めた。「何でロープを解くの?命知らずね!」
霧島冬真は落ち着いた声で説明した。「雨がどんどん強くなってる。ここは危険すぎる。お前は軽いから、先にロープを付けて、大谷希真たちに引き上げてもらおう」
夏目星澄の心が震えた。「あなたはどうするの?」
霧島冬真は安心させるような笑顔を見せた。「俺は身体能力がいいから、自分で登れる。心配するな、大丈夫だ」
普段なら、霧島冬真のこの言葉を夏目星澄は信じたかもしれない。しかし、今のような暴風雨の状況では、至る所が滑りやすくなっており、登るどころか、落ちないだけでもましな方だった。
夏目星澄は冷たい表情で言った。「霧島冬真、あなた嘘ついてる」
霧島冬真の手の動きが一瞬止まり、その後緩んだ。「まさか、俺は自分の命を賭けて冗談を言うようなことはしない。信じてくれ」
夏目星澄は突然、霧島冬真の手を掴み、かすれた声で尋ねた。「私、人に嘘をつかれるのが一番嫌い。霧島冬真、本当にそうしたいの?」
霧島冬真は黙り込んだ。
夏目星澄もそれ以上追及せず、澄んだ目で固く言った。「上るなら一緒に上りましょう」
霧島冬真は口角を少し上げた。「ああ」
そうして二人は互いを支え合いながら、一歩一歩上へと登っていった。
やっと半分まで登ったとき、夏目星澄の足が突然滑り、体が後ろに傾いていった。
その瞬間、霧島冬真は再び夏目星澄の手首をしっかりと掴んだ。
しかし慣性が大きすぎて、ロープは張り詰めると同時に裂け始めた。