第329章 たとえ死んでも夏目星澄と共に死ぬ

すべてが突然起こった。

夏目星澄は反応する間もなく、梁川千瑠に引っ張られて後ろに倒れてしまった。

そして彼女は霧島冬真の心を引き裂くような声を聞いた。「いや、星澄!」

彼は狙撃手が梁川千瑠を撃てば、その場で死んで夏目星澄を傷つけることはないと思っていた。

しかし彼女の執念があまりにも深く、死んでも夏目星澄を放そうとしなかった。

霧島冬真は狂ったように駆け出した。

彼女を救わなければならない!

大谷希真はすぐに後を追い、霧島冬真が飛び降りる前に彼の腰をしっかりと抱きとめた。「社長、飛び降りてはいけません。死んでしまいます!」

霧島冬真は必死に振り払おうとした。「離せ、星澄を救わなければならない。もう二度と彼女を失うわけにはいかない!」

大谷希真は歯を食いしばって手を放さなかった。霧島冬真に殴られて血を吐いても。

呆然としていたボディーガードたちも事態の深刻さに気づき、次々と霧島冬真の崖下りを止めようとした。

霧島冬真は狂ったように叫んだ。「離せ!さもないとお前たちを殺す!」

男の目は血走り、狂気に陥り、彼を止める者たちと殴り合いを始めた。

霧島冬真が崖に近づき、落ちそうになった時。

突然、崖下から助けを求める声が聞こえた。「助けて!」

霧島冬真の体が凍りついた。そして素早く頭を下げ、声の出所を探した。

果たして夏目星澄の姿を見つけた。

彼女は木にぶら下がり、今にも落ちそうだった。

霧島冬真の心臓が震えた。彼女が少しでも不注意をすれば落ちてしまうのではないかと恐れた。「星澄、動かないで。今すぐ助けに行く!」

夏目星澄も確かに動く勇気がなかった。

実は彼女は運が良かった。

梁川千瑠と一緒に落ちた時、崖の木が二人を受け止めてくれた。

夏目星澄はすぐに両手で木をしっかりと掴み、落下を防いだ。

すでに死んでいた梁川千瑠は、木で一度揺れただけで完全に落下し、海に沈んでいった。

夏目星澄がまだ動揺している時、近くから霧島冬真の苦痛に満ちた叫び声が聞こえた。

そして続いて殴り合いの音が聞こえた。

夏目星澄は何が起きたのか分からなかったが、本能的に助けを求め、何度も叫んで、ようやく霧島冬真に聞こえた。

霧島冬真はヘリコプターに飛び乗り、夏目星澄を救いに行こうとした。