第344章 彼女は少しも彼のことを気遣わないのか?

花井風真は眉をひそめ、ここから逃げ出す方法を必死に考えていた。

正面玄関から出るのは不可能だし、飛び降りるのも無理だ。自分は危険を顧みなくてもいいが、夏目星澄はそうはいかない。

突然、彼の視線が近くのテーブルの上のハサミに向けられた。

それは彼が先ほど傷の手当てに使ったものだ。もしハサミを手に入れて、自分の命を人質に取れば、彼らは夏目星澄を見逃してくれるかもしれない。

今となっては、他に方法がない。

花井風真が行動を起こそうとした時、ボディーガードの一人が彼の意図を察知し、素早く彼の手を押さえつけた。「風真様、何をするつもりですか?」

ボディーガードのリーダーが重々しく言った。「風真様は大人しく私たちについて来る気がないようですね。申し訳ありませんが、お二人とも縛らせていただきます。」