ボディーガードは少し困惑した。この夏目星澄は壊れ物でもないのに、触れることすらできないなんて、霧島冬真は彼女を守りすぎだ。
彼がそんなに好きなら、なぜ最初に離婚したのだろう。
そのせいで、我が家の風真様が忘れられず、お爺様にまで逆らうことになってしまった。
もっとも、これらの文句は心の中でしか言えないことだが。
花井風真も霧島冬真の言葉に一理あることを理解していた。今の彼は花井家から逃れることができず、どうやって夏目星澄を守れるというのか。
夏目星澄は霧島冬真を睨みつけ、でたらめを言わないよう警告した。
そして花井風真に目を向けて、「風真、私のことは心配しないで。やりたいことをやればいい」
花井風真は体を硬くし、夏目星澄を見上げた。
彼の目には、彼女はいつも強くて勇敢な人だった。
彼が彼女を愛するようになったのは、時間とともに芽生えた感情であり、また抑えきれない想いでもあった。
もちろん、彼は彼女を諦めるつもりもない。
「わかった。安心して、必ず上手く解決するから、絶対に!」花井風真は夏目星澄に厳かに約束し、それは自分自身への誓いでもあった。
霧島冬真は二人のこの様子を見て、心中穏やかではなかった。
いつから夏目星澄は花井風真をこれほど気にかけるようになったのか。
傍らのボディーガードはもう待ちきれなくなっていた。「風真様、行きましょう。お爺様を長く待たせるわけにはいきません」
花井風真は仕方なく頷き、深く息を吸って、彼らと共に立ち去ろうとした。
しかしその時、霧島冬真が突然口を開いた。「誰が彼をこのまま連れて行っていいと言った?」
霧島冬真が冷たい口調でそう言うと、大谷希真が手を上げ、後ろのボディーガードたちに入口を塞がせた。
花井風真を連れて行こうとしていたボディーガードは呆然とした。「霧島社長、どういうおつもりですか?」
この時、花井風真自身も困惑していた。霧島冬真がここに来たのは夏目星澄を守るためではなかったのか?
彼が花井家の人々に連れて行かれることは、霧島冬真にとっては喜ばしいことのはずなのに、なぜ止めようとするのか?