霧島冬真は花井正道の声に怒りが込められているのを聞き取ったが、彼には恐れるものなど何もなかった。「花井お爺様、そんなことを言われても、花井さんの足は自分のものですから、行きたいところへ自分で行けばいいでしょう」
花井正道もようやく霧島冬真の言葉の真意を理解した。彼が花井風真を行かせない本当の理由が分かったのだ。
「分かった。お前は冬休みの件は前妻とは無関係で、彼女を巻き込むべきではないと思っているんだな。安心しろ、今日この老いぼれが約束しよう。これからはこんなことは二度と起こらないようにする。どうだ?」
霧島冬真はもう長々と話す気もなかった。「では、花井お爺様のお言葉、ありがたく頂戴いたします」
「では、花井風真は...」
「花井お爺様、焦らないでください。申し上げた通り、足は花井さん自身のものです。どこへ行くかは彼の勝手で、私には関係ありません」
花井正道は顔を曇らせた。これは無駄口ではないか。
花井風真が自ら帰りたがっているなら、わざわざあれほどの警備員を差し向けて捕まえようとはしないだろう。
「霧島冬真、そんな言い方は面白くないぞ。以前、我が花井家とお前たち霧島家は親戚になりかけたほど親密な関係だった。このまま争いを続けて、関係が修復できないところまで行ってしまったら困るぞ!」
花井正道の言葉は霧島冬真に向けられていたが。
部屋の中は静まり返り、彼の声は受話器から聞こえ、他の人々にもはっきりと聞こえていた。
それを聞いて、皆の表情が一変した。
これは完全に霧島冬真への脅しだった。
花井風真は祖父の手腕をよく知っていた。もし本当に関係が破綻すれば、霧島家も決して無事では済まないだろう。
しかし霧島冬真は全く気にする様子もなく、むしろ傲慢に笑い出した。「そうですか?花井お爺様は我が霧島家と対立するおつもりですか。構いませんよ。では、じっくり見ていましょう。この潮見市で誰の言うことが通るのか、あなたか、それとも私霧島冬真か!」
花井正道はもう何も言わず、電話を切った。
花井家の警備員たちはその様子を見て、もはやここに留まる理由がないことを悟った。
花井風真を数回見やった後、何も言えず、頭を下げて立ち去った。
大谷希真も自分の警備員たちと共に察して退出した。