第347章 単純にあの人たちが気に入らない

病院に向かう途中。

夏目星澄は霧島冬真の傷を心配そうに見つめ、「今はどう?まだ痛む?」と尋ねた。

霧島冬真は躊躇なく「痛い」と答えた。

実際、体の痛みはたいしたことなかったが、ただ夏目星澄に心配してもらいたかっただけだった。

夏目星澄は霧島冬真が薬を塗る時の様子を見ていた。体中の傷は目を覆いたくなるほどひどかった。

その傷のすべてが自分を救うためについたものだと思うと、焦りを感じて「大谷補佐、車をもう少し急いでください」と言った。

「はい、夏目さん、できるだけ急ぎます」と大谷希真は即座に応えた。

霧島冬真の前では夏目星澄のことを若奥様と呼んでいたが、本人の前では夏目さんと呼んでいた。

そうすれば霧島冬真も喜び、夏目星澄も不快に思わないだろう。

彼は本当に賢かった。