大谷希真が去った後、病室は静かになった。
夏目星澄は気まずさを和らげるため、霧島冬真にリンゴの皮を剥いてあげることにした。「医者が栄養が必要だと言っていたから、このリンゴを食べてね」
霧島冬真は微笑みながら答えた。「ありがとう」
彼はリンゴを食べながら夏目星澄を見つめていた。
夏目星澄は見つめられて少し落ち着かなかったが、自分から残ると言い出したのだから何も言えなかった。
彼女は携帯を取り出して見て、花井風真に電話をかけて様子を聞こうと思った。帰宅後、おじいさんにまた問題を起こされていないかどうかを。
しかし、霧島冬真の前で聞くのは良くないと思い、外に出て電話をしようとした。
ところが彼女が立ち上がった途端、霧島冬真は尋ねた。「どこに行くの?」
まるで彼女が突然いなくなってしまうのを恐れているかのように、深い眼差しで彼女を見つめていた。