翌日、夏目星澄と林田瑶子は約束通りの時間にオーディション会場に到着した。
オーディションを受けることになった作品は、タイムスリップものの宮廷ドラマだった。
現代のジャーナリスト朝倉和佳が事故で水に落ち、蒼明時代にタイムスリップして満州族の少女ホシェリ・イランとなる物語。彼女は全ての人々の運命を知っているが、それを変えることはできず、自分の結末さえも掴めない。
彼女は性格も地位も異なる四王子、八王子様、十三王子、十四王子との切ない恋愛模様を経験しながら、皇位継承争いの歴史的瞬間を目撃することになる……
ヒロインの演技の幅は広く、この役を上手く演じることができれば、演技力の証明になることは間違いなかった。
そのため、夏目星澄はオーディションの誘いを受けた時、緊張しながらも期待に胸を膨らませていた。
夏目星澄はヒロイン役のオーディションを受ける5番目の人だった。
オーディションのシーンは、タイムスリップ後、最も親しい五姫様が権力と利益の争いによってモンゴルに政略結婚させられるというものだった。
高貴な姫様でさえ自分の運命を決められない古代の女性の悲しみを目の当たりにし、初めてこの時代とこの宮廷に恐怖を感じる場面だった。
脚本に従って、夏目星澄は化粧を施し、衣装を着替えた。
古代の宮女の姿が皆の前に現れた。
彼女の古典的で繊細な、派手すぎない容姿は時代劇に特に適していた。
これが監督が彼女に目をつけた主な理由だった。
朝倉翔羽は優しい口調で言った。「星澄、台本は読んだわね。緊張しないで、しっかり演じてください」
夏目星澄は深く息を吸って、「はい、監督、始めてください」と答えた。
監督が「スタート!」と声をかけると、夏目星澄はすぐに感情を切り替え、物語の中に入り込んだ。
五姫様が皇帝陛下によって政略結婚させられると聞いた彼女は、まるで逃げるように御苑へ走り、かつて五姫様と遊んだ池のほとりで立ち止まり、一人涙を流した。
昨日まで二人で楽しく未来を語り合っていたのに、今日になってすべてが崩れ去ってしまった。
現代人である彼女にとって、このような結末は到底受け入れられないものだった。しかし、古代にいる身として、高みにある皇権に対して抵抗する術もなかった。