霧島冬真の冷たい態度に、夏目星澄は一瞬戸惑った。
しかし、昨夜起きたことを思い出し、できるだけ穏やかな口調で言った。「私がなぜ来てはいけないの?霧島冬真、そんなに私に会いたくないの?」
霧島冬真は確かに、夏目星澄に自分のこんな惨めな姿を見られたくなかった。
「見るものは何もない。帰れ」
しかし、彼が帰って欲しいと思えば思うほど、彼女は留まろうとした。
夏目星澄は直接霧島冬真のベッドの側に行き、近くの椅子を引き寄せて座った。「帰らないわ」
霧島冬真は意図的に冷たい表情で言った。「帰らないって、何がしたいんだ。忘れるな、お前が言ったんだ。俺たちはもう離婚して何の関係もないって。だから何の権利があって残るんだ?」
以前は夏目星澄を自分の側に留めたいと思っていた分、今は彼女に去って欲しいと思っていた。
彼のプライドが、自分の蒼白く惨めな姿を彼女に見せることを許さなかった。
以前なら、夏目星澄も本当に霧島冬真と関わりを持ちたくなかった。
でも今は、そんなことは言えなかった。
夏目星澄は誠実な眼差しで彼を見つめた。「あなたが私を二度も救ってくれたから。あなたは私の恩人よ」
「だから恩返しか?」
「そう考えたいならそれでもいいわ」
たとえ見知らぬ人に助けられても恩返しをするべきなのに、まして霧島冬真はこんなに重傷を負っているのだから。
霧島冬真は眉をひそめて拒否した。「必要ない。帰れ!」
夏目星澄は動じなかった。「いいえ、必要よ。霧島冬真、私を追い払うことはできないわ」
霧島冬真は深いため息をつき、夏目星澄を見ずにドアの方に向かって大声で呼んだ。「大谷!大谷、入ってこい」
ドアの外で待機していた大谷希真は、すぐに部屋に入ってきた。「霧島社長、お呼びでしょうか」
霧島冬真は少し陰鬱な表情で言った。「彼女を家まで送れ。もう会いたくない」
大谷希真は少し戸惑い、霧島冬真が何をしているのか理解できなかった。
ずっと思い続けていた人がようやく来たのに、なぜ突然追い払おうとするのか?
大谷希真はためらいながら探りを入れるように尋ねた。「社長...本当によろしいのでしょうか?」
「何だ?俺の言うことが分からないのか?」
「分かります。ですが社長...」