この日、霧島冬真の足の抜糸の日が来た。
医者が入ってくると、霧島冬真は傍らにいる夏目星澄に言った。「星澄、朝日亭の骨付きスープが飲みたくなったんだ。買ってきてくれないか?」
夏目星澄は少し不思議に思った。彼は今まで何を食べたいとか言ったことがなかったのに、どうして今日に限ってこんなことを言い出すのだろう?
しかし彼女はスマートフォンを取り出して、「いいわ、デリバリーを頼むわ」と言った。
霧島冬真は付け加えた。「あそこはデリバリーをやってないんだ。店まで行かないと」
注文すれば買えるものなら、わざわざ彼女に言う必要もなかったはずだ。
しかし夏目星澄はここを離れたくなかった。何か必要なことがあったときに、間に合わないかもしれないと心配だった。
でも問題は解決策よりも少ないもの。「大丈夫よ、出前サービスを頼めばいいわ」