第380章 花井風真は後悔で胸が張り裂けそうだった

朝倉茉莉は顔を引きつらせ、夏目星澄がマンゴーにアレルギーがあるとは思いもよらなかった。

しかし、今となってはこの汚名を夏目星澄に着せるしかない。

そうしなければ、彼女は面目を完全に失ってしまう!

「みんな、何をしているんだ?」

朝倉茉莉が説明の言葉を考えている間に、威厳のある声が人々の後ろから聞こえてきた。

皆が振り返ると、花井お爺様が執事と朝倉茉莉の両親を連れて近づいてくるのが見えた。

花井お爺様は今日の誕生祝いの主役であり、自然と皆が道を開けた。

彼は周りを見渡し、最後に朝倉茉莉のドレスに目を止めた。そこに黄色い粘っこいものが付いているのを見て、すぐに眉をひそめた。

「風真、どういうことだ。朝倉さんをしっかり世話するように言っただろう。これがお前の世話の仕方か?」

朝倉茉莉の両親が近寄り、彼女を上から下まで見て、何があったのか声を荒げて尋ねた。

しかし朝倉茉莉は下唇を軽く噛み、可哀想で悔しそうな目で花井風真を見つめるだけで、首を振り、そしてゆっくりと涙を流した。

朝倉明弘はこの様子を見て、愛する娘が虐められたと確信し、花井風真に詰め寄った。「風真、早く説明しろ。一体どういうことだ。うちの茉莉が泣いているじゃないか!」

花井風真は深く息を吸い、一歩前に出て、花井正道に説明した。「お爺様、実は大したことではありません。ただの誤解です。」

花井お爺様は突然夏目星澄を一瞥し、冷ややかに言った。「誤解だと?私の目が見えないとでも思っているのか。もし誤解だけなら、なぜ茉莉が泣いているんだ。彼女の着ているドレスはなぜ汚れているんだ。誰が汚したんだ?」

花井お爺様は長年表舞台から退いているものの、その威厳は健在で、声を低くしただけで周りの若い世代を怖がらせた。

夏目星澄は花井風真のお爺様のこの態度が自分に向けられていることを察し、逃げても無駄だと分かった。

それに、正しいことをしている人は影に怯える必要はない。何も間違ったことはしていないのだから、逃げる必要もない。