緒方諒真がいるので、夏目星澄が損をすることはないだろう。
しかし「ヒーロー救美」のチャンスは、やはり霧島冬真本人にやらせるのが相応しい。
電話が切れた。
霧島冬真は一秒も座っていられず、急いで大谷希真に車椅子を持ってくるよう頼んだ。
大谷希真も電話での会話を少し聞いていたので、きっと夏目星澄に関することだから、霧島社長がこんなに焦っているのだろうと察した。
しかし、霧島社長の今の状態では遠出など到底できない。
「社長、慌てないでください。花井家には緒方社長がいらっしゃるじゃないですか。若奥様は絶対に大丈夫です。それに医者も先ほど静養が必要だと言っていましたし、この足が...」
霧島冬真は冷たい目で見つめ、「それでもダメだ。私が直接行かなければならない。緒方諒真は他の者には対処できても、花井正道という老狐には太刀打ちできない」