芦原蘭は怒りで顔が真っ赤になったり青ざめたりしながら、「あなた何様のつもり?そんな口の利き方をするなんて!」
夏目星澄は芦原蘭の人を食わんばかりの目つきを完全に無視して、続けて言った。「あなたの行動通りに言っただけよ。そんな単純なことまで聞く必要があるの?」
「人として最低限の礼儀も分からないあなたが、よくもここで私を責めることができますね。そもそも私は朝倉さんに対して一切いじめたことなどありません。あなたには私の人格を貶める理由も証拠もないはずです。もしこのまま無謀な振る舞いを続けるのなら、私も法的手段で自分の権利を守ることを躊躇いませんよ」
芦原蘭は怒りで声を震わせながら言った。「あ、あなたが私を訴えるですって?笑わせないでよ。自分の立場もわきまえないで!」
夏目星澄は微笑みながら眉を上げた。「へぇ?芦原さんの口ぶりからすると、権力で人を押さえつけようとしているようですね。残念ですが、私は脅しで育てられた訳じゃありません。やる気になれば必ずあなたを訴えることができますよ」
芦原蘭は夏目星澄が大口を叩いているだけだと思い、彼女にそんな力があるとは信じていなかった。「大きく出たわね。弁護士があなたの案件を引き受けるはずがないわ!」
花井家は潮見市では顔が利く名家だ。夏目星澄のような三流タレントのために、誰が花井家の逆鱗に触れるようなことをするだろうか。潮見市で生きていけなくなるのが関の山だ!
花井風真は芦原蘭が権力を笠に着て人を威圧する様子が我慢できなかった。「芦原蘭、いい加減にしろ。何様のつもりだ、俺の友人を脅すなんて」
芦原蘭はその一喝で急に怖くなり、首をすくめて黙り込んでしまった。
「星澄、本当に申し訳ない。家族をきちんと管理できずに迷惑をかけてしまって...」
夏目星澄は首を振った。花井風真もこんな事態になることは望んでいなかったことを理解していた。
彼が謝る必要はない。
「大丈夫よ、私が自分で対処できるから」
しかし彼女の言葉が終わるか終わらないかのうちに、不敵な声が聞こえてきた。「失礼します、皆さん道を開けていただけますか」
現れた人物はグレーの高級オーダーメイドスーツを身にまとい、傲然とした表情で周囲を見渡していた。
誰かが彼を認識して、小声で言った。「あれは緒方家の若旦那じゃないか。何をしに来たんだろう?」